ドリーム・ポップとサイケ・ポップを再定義する超新星バンド、2020年代注目のDrug Store Romeos【Virgin Music Japan Picks】

執筆:RUPIN(Virgin Music Japan Staff)


Virgin Music Japanがインディ音楽シーンで注目され始めたばかりの気鋭な新人アーティストを紹介する企画「Virgin Music Japan Picks」。迎えた5回目となる今回は、Tame Impala、The Big Moonなどが所属するFiction Recordsから今年デビューしたばかりのUK出身の3人組バンド、Drug Store Romeos(ドラッグ・ストア・ロメオズ)だ。


メンバー全員がまだ20代前半のDrug Store Romeosは、幼なじみだったドラマーのJonny GilbertとギタリストのCharlie Hendersonが出した新しいベーシスト募集の広告に、ベースも持っていなかったボーカリストのSarah Downieが応募したことがきっかけで結成された(後にCharlieがベーシストに役割を変更)。Drug Store Romeosというバンド名は、テネシー・ウィリアムズの戯曲「欲望という名の電車」に由来する。

「ロンドンシーンのバンド」というカテゴリーをご存知の方からは、焦燥感に駆られるポストパンク・バンドのようなサウンドを想像するかもしれない。しかし、彼らの音楽は、全くそういった類ではない。Broadcast、Stereolab、Mild High Clubなどの個性的なアーティストを参考にしながら、プロデューサーのGeorge Murphyと協力して、彼らのサウンドをさらに高めてきた。デビューしたばかりだが、Drug Store Romeosの音楽はまるで時代感覚を超えたサウンドだ。1990年代の4ADを彷彿させる催眠術のように繊細なドリームポップと、チープなシンセサイザーやドラムマシンによるスペーシーな探求心がミックスされたようなサウンド、クラウトロックやジャーマンロックにも影響を受けた世界観が魅力の素晴らしいバンドだ。彼らの曲には宇宙的な神秘性や、ロマンティシズム、異世界感を表現している。加えて、初期のスタジオセッションから一緒に仕事をしてきたMurphyのプロダクションが、儚さを損なうことなくアルバムに重みを与えている。メンバーのCharlieは自分たちの音楽を「僕らの曲の多くは、揺れるような動きと柔らかなエネルギーを持っている。多くの人は、夜、一人で聴くと思う。」と語る。


今年に入りバンドは、The FADER恒例の新人アーティストをピックアップするテイストメーカーシリーズである「GEN F」や、Pigeons & Planesの「2021年に聴くべき15の新人・新進バンド」に選ばれた。BBC Radio 1のジャック・サンダース、ヒュー・スティーブンス、フィル・タガート、シアン・エレリ、6 Musicのローレン・ラバーン、ショーン・キーベニー、Radio Xのジョン・ケネディ、Apple Musicのマット・ウィルキンソンなど、新人バンドと思えないほど、世界配信のラジオDJから常に高い評価を受けている。


今年の夏にリリースされたデビューアルバム『The world within our bedrooms』は、例えるならBeach Houseのアルバム『Devotion』を彷彿させるような、全曲を通じて超現実的なUK都市型ポップスと言えるサウンドを表現している。薄暗い雰囲気が漂いつつも、若さと冒険心が垣間見え、日常からの逃避、そして芸術は常に逃避したい人のためにあることを伝えている。メンバーは「このアルバムは、感情と色の配置の旅なんだ。多くのバンドは、アルバム全体を通して一貫した感情を表現しているが、私たちは変化し続ける人々の精神状態を反映させたい。私たちは常に自分だけの世界を作りたいんだ」と語る。

作品では音楽的な芸術表現に加えて、既成の秩序や常識に対する否定、攻撃、破壊を大きな特徴とするダダイズムの影響も受けており、ボーカルのSarahは歌詞のインスピレーションを探すため、eBayで2000年代前の雑誌を集めたという。先行リリースされたシングル「What’s On Your Mind」と「Secret Plan」を含め、同アルバムはThe Line Of Best Fit、So Young、Dork、Gigwise、DIY Magなどインディー系のメディアで次々と高く賞賛され、Independent、Notion、NME、Coup de Mainでプレイリストに掲載された。NMEは「今年の最も繊細でこの世のものとは思えないデビューアルバム。うとうとするようなマイクロポップの朦朧としたアンソロジー、そこには崇高さがあふれている。このアルバムが30年前にリリースされていたら、今頃はカルト的な人気を誇っていたかもしれない。」と絶賛している。

学生仲間と始めたバンドは今やロンドンから世界へスポットライトを浴び始めている。Drug Store Romeosは今後ますます活躍していくこと間違えなしだ。日本での知名度はまだまだこれからなので、質のいい音楽を知っているツウの方は是非とも彼らの音楽に注目して欲しい。


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バイオグラフィー

Drug Store Romeos
Charlie Henderson、Jonny Gilbert、Sarah Downieの3人が高校時代に結成。Stereolab、Broadcast、Portishead、Mild High Clubsなどドリーム・ポップやサイケデリック・ポップの影響を受けて育った共通点に共感し合い、バンド活動を開始。数カ月に渡り小さなライブハウスでの演奏を経て、2019年にFiction Recordsと契約し、シングル「Now You’re Moving」でデビュー。ライブやフェスティバルへの出演を重ね、新人にも関わらずThe Orielles、The Big Moon、Soccer Mommyの前座を務めるなど早くから存在感を示し、The FaderやBBC 6 Music、Gigwise、DIY、Dorkといった音楽カルチャーメディアから注目の新人アーティストとの称賛を集める。2021年に1stアルバム『The World Within Our Bedrooms』をリリース。



作品情報


アルバム:The world within our bedrooms
発売日:2021年6月25日(金)
レーベル: Fiction Records



◆トラックリスト
1. Building Song
2. Secret Plan
3. Bow Wow
4. Elevator
5. Walking Talking Marathon
6. Frame Of Reference
7. Feedback Loop
8. What’s On Your Mind
9. No Placing
10. Vibrate
11. Electric Silence
12. Kites
13. Put Me On The Finish Line
14. Cycle Of Life
15. Adult Glamour

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