St. Vincent、Sylvan Esso、Steven Wilson、第64回グラミー賞にノミネートされたインディーアーティストたちを紹介
執筆:カジ(Virgin Music Japan Staff)
新型コロナウイルスのオミクロン変異株感染が再拡大したことを理由に、開催が延期されていた「第64回グラミー賞」。先日、2022年4月3日(日本時間4月4日)に変更することが正式に発表された。会場もロサンゼルスのクリプトドットコム・アリーナから、ラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナへ変更が決まった。
今年は、シンガー・ソングライターのJon Batisteが最多11部門にノミネートされたのをはじめ、H.E.R.、Doja Cat、Justin Bieberが8部門にノミネート、Billie EilishとOlivia Rodrigoが7部門でノミネートされるなど、賞レースの行方はすでに多方面で話題を集めている。
注目すべきポイントの一つは、インディーシーンで活躍するアーティストの選出だ。近年はインディー界隈から世界的に支持されるアーティストや作品が次々と生まれる傾向が高まっているが、今年も例外ではなく、Glass Animals、Japanese Breakfast、Arlo Parks、Arooj Aftabなどのインディーアーティストが多数選出されており、その存在が年々際立っている。
今回のグラミー賞では、世界中でインディーアーティストを支援しているグローバル・レーベルサービス 「Virgin Music Label & Artist Services」(以下Virgin Music)から作品をリリースしてきたアーティストやプロデューサーたちが11部門でノミネートされた。その中には、これまで2度グラミー賞を受賞しているSt. Vincentや、今年が5度目のノミネートになるSteven Wilsonも含まれる。そこで、この記事では、Virgin Musicリリース作品がノミネートされたアーティストを紹介してみたい。
「最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム賞」
St. Vincent 『Daddy’s Home』ロックの殿堂入りを果たした、「生ける伝説」St. Vincent。自身の卓越したギターテクニックとソングライティングによって、見事に70年代当時のバロック〜サイケデリック・ロックを再現した傑作。
「最優秀エレクトロニック・ダンス・ミュージックアルバム賞」
Sylvan Esso 『Free Love』USの男女デュオ、通算3枚目のフルアルバム。アートポップの要素を詰めながら、テクノ、ハウス、そしてフォークと幅広くジャンルを跨ぐ。ネクストフェーズへと羽ばたく、革新的で遊び心に溢れた一枚。
「最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞」
Steven Wilson 『The Future Bites』プログレッシブ・ロックリバイバルの火付け役となったUKのバンドPorcupine Treeの中心人物。80sニューウェーブからインダストリアル、そしてネオアコと、多岐にわたる彼の音楽趣向と実験性が融合された前衛的で面白みのある作品。
「最優秀アルバム技術賞(クラシック以外)」
Pino Palladino & Blake Mills 『Notes With Attachments』数多くのアーティストのツア・メンバーやサポートを務めてきたベーシストPino Palladinoと、近年の音楽シーンで注目度高める名プロデューサーのBlake Millsがタッグを組んだ一作。圧倒的な演奏とセッションという即興性から生み出される「ライブ感」。音の響きや構成ひとつひとつから、二人の並々ならぬ音楽愛が感じられる。
「最優秀アメリカーナ・アルバム賞」
Yola 『Stand For Myself』The Black KeysのDan Auerbachが立ち上げたレーベル、Easy Eye所属のシンガーYolaによる2枚目のアルバム。ヴィンテージソウルを継承し、古き良きアメリカの風景に今に蘇らせる。どこか懐かしく、いつかの記憶を呼び覚ます青春ドリーム盤。
「最優秀アメリカン・ルーツ・ソング賞」
Yola「Diamond Studded Shoes」「最優秀アメリカーナ・アルバム賞」ノミネートされた『Stand For Myself』より。スウィング、ドゥーワップをベースに、彼女の力強い歌声とアメリカンなグルーヴが見事にシンクロ。映画のサントラさながらの色彩の豊かさにも思わず微笑んでしまう一曲。
「最優秀ブルーグラス・アルバム賞」
Billy Strings 『Renewal』ブルーグラス界のブライト・ホープ、Billy Strings。スウィートでソウルフルな歌声と芳醇なメロディーが交差し美しいアンサンブルを生み出す。ストリングスとアコギの完璧すぎる掛け合いにもうっとりな全16曲。
「最優秀アメリカン・ルーツ・パフォーマンス賞」
Billy Strings 「Love And Regret」夕暮れ時にゆっくりと空を眺めながら聴きたい、どこか寂しげのあるミディアムバラード。アルバムの中でも一際ストリングスの美しさ引き立ち、ソングライターとしての確かな才能が感じられる一曲。
「最優秀フォーク・アルバム賞」
Sarah Jarosz 『Blue Heron Suite』ミニマルなセットながら、圧巻の歌唱と厚みあるベースラインで驚くほどに空間を拡張する一枚。作中4箇所に挟まれた「Interlude」を一つの区切りとして場面を変える。繊細さの中に込められた力強さが全身に伝わる、現行最高レベルのフォークアルバム。
「最優秀ボックス/スペシャル・リミテッド・エディション・パッケージ賞」
・Soccer Mommy 『Color Theory』Lordess Foudre & Christopher Leckie, art directors
@virginmusicjp グラミー賞2022のベストパッケージ部門で、Soccer Mommyの『Color Theory』がノミネート!中身が可愛い💕#soccermommy #grammys #grammys2022 @soccermommyband ♬ circle the drain – Soccer Mommy
アルバム『Color Theory』の限定LPボックスセットは、カラフルなヴァイナルがルーズリーフになった文房具スタイルが特徴のパッケージ。カラーLPに加えて、手書きの歌詞ノートやステッカー、Soccer Mommyロゴが印刷されたペンとペンケースが付いて、子供時代を想起させるデザインだ。6枚のカラーヴァイナルにはデモ曲が収録されていて、実際に再生することができる。
・Steven Wilson『The Future Bites (Limited Edition Box Set)』
Simon Moore, art director (Steven Wilson)
今年のグラミー賞で2部門にノミネートされたSteven Wilsonは、世界に一つしか存在しないウルトラ・デラックス・ボックスセットを作った。価格もなんと10,000英ポンドで、日本円で157万円!同パッケージでしかリリースしない7インチやライブ音源、ポラロイド写真、制作に使われたプリント素材、手書きのイラストや歌詞とファンにはたまらないアイテムばかりが揃う。なぜか、Steven Wilsonのグラミー賞ノミネート証明書とメダルも入っている。このボックスセットの収益はイギリスのライブ会場を支援するチャリティ団体に全額寄付された。
第64回グラミー賞の開催は、4月3日(日本時間4月4日)に決まった(再度延期されなければよいが)。毎回チャート実績あるアーティストばかりに注目が集まりがちだが、今回紹介したインディーアーティストの他にも、毎年、クリエイティブ精神に富んだインディーシーンのアーティスト、作詞作曲家、作品が多数ノミネートされていることも、グラミー賞の醍醐味の一つだろう。全くの無名な存在から、一躍音楽シーンで注目を浴び、さらなる飛躍に期待が高まる、そんなインディーアーティストたちに注目して、グラミー賞を追ってみるのはいかがだろうか?
Virgin Music Japanが毎週更新する、世界中のインディーアーティストを紹介するSpotifyプレイリスト「Virgin Music Japan Weekly」も聴いてみよう。