進化する南ロンドンのジャズ・ムーブメントを象徴する新星アーティスト、Poppy Ajudhaが『The Power In Us』で示す音楽観【Virgin Music Japan Picks Vol.8】
執筆:カジ(Virgin Music Japan Staff)
Virgin Musicが誇る多様なラインナップの中から、注目のインディーアーティストを紹介する企画「Virgin Music Japan Picks」。第8弾となる今回は、UKジャズシーンのブライト・ホープ、Poppy Ajudhaを取り上げる。
近年、新たな音楽の震源地として注目が集まるサウス・ロンドン。実力、センス、教養、カルチャーといった、強力なバックボーンを持ちつつ、堅実に音作りを追求する若いアーティストたちを輩出してきた。彼ら彼女らの姿勢は、遠く離れた日本にいる我々をも興奮させる。ジャンルで言えば、エクスペリメンタル色の強いバンドの台頭や、ジャンルを超越したジャズアーティストの飛躍は、ロンドンの多様性を物語っている。そんなクリエイティブな若手がひしめく昨今、一際異彩を放っているのがPoppy Ajudhaだ。
Poppy Ajudha は10代から楽曲制作を始め、2018年にリリースされたTom Mischの楽曲「Disco Yes」でのコラボレーションで注目を集めたアーティストだ。彼女の才能は、ジャズシーンやロンドンのアーティストコミュニティに留まらない。世界的なDJ、ジャイルス・ピーターソンも認めており、Jose JamesやFlying Lotusなどをブレイク前にフックアップしたコンピレーション『Brownswood Bubblers』シリーズで、Ajudhaの楽曲「Love Falls Down」をセレクトしている。ジャズの名門レーベルBlue Noteでは、過去にリリースした名曲を若手アーティストが再構築するプロジェクト「Blue Note Re:imagined」にPoppy Ajudhaを起用。コラボレーションするアーティストには、Moses Boyd、Tom Ford、Swindle、Mahaliaと南ロンドンの実力派が並び、さらにはNubya Garcia、Joe Armon-Jones、Dylan JonesといったUKジャズの重要アーティストが楽曲に参加するなど、今最もネクストブレイクに近いアーティストだと言える。
<Poppy Ajudha – Love Falls Down>
そんな彼女のデビューアルバム『The Power In Us』が4月にリリースされる。共に制作を行ったのはFKA TwigsやJorja Smithを手掛けるJoel Compass。プロダクションにはWyn Bennett (Janelle Monae、Haim)、Karma Kid (Dua Lipa、Arlo Parks)、Wesley Singerman (Anderson Paak.、Kendrick Lamar)と、もはや説明不要の実力あるメンバーが集結した。製作にこれだけのメンバーが集まることからも、彼女のアーティストとしての信頼の高さがうかがえる。
Ajudhaの音楽で特筆すべき最大のポイントは、楽曲に織り込むストレートで、時には辛辣なメッセージ性だ。アルバムの先行シングル「London’s Burning」では、イギリスの植民地支配の歴史を振り返る壮大なテーマで、不平等や不穏な情勢を招く現代社会を真っ向から批判している。
<Poppy Ajudha – London’s Burning>
アルバム『The Power In Us』は、彼女が常日頃から謳ってきた政治、ジェンダー、国を超えた権利など、センシティブなトピックに向き合った作品だ。まさにアーティストとしての彼女の覚悟が体現されたアルバムとなった。目まぐるしく変化する現代社会において、様々な問題を自らの感覚で咀嚼し、強烈なメッセージとイメージとともに楽曲に落とし込む才能は、トレンドを追い続けるような他のアーティストとは一線を隠すセンスを見ることができ、次世代の音楽シーンを担う存在としての確かな力を感じる。『The Power In Us』はAjudhaのこれまでの活動の集大成にして、これからの活動の未来へ向かう明るい一歩を踏み出す作品となるだろう。
<Poppy Ajudha – Holiday From Reality>
<バイオグラフィー>
サウス・ロンドンを拠点に活動するアーティスト。セントルシアとイギリスにルーツを持ち、父親の影響で幼少期よりジャズをはじめ様々な音楽に触れて育った。10代より楽曲制作をはじめ、才能を開花。2018年にはTom Mischの楽曲「Disco Yes」にフィーチャリング参加し注目を集めた。2020年にはJAZZの名門「BLUENOTE」の名曲をUKジャズシーンで活躍するミュージシャン達がカバーしたコンピレーション・アルバム『ブルーノート・リイマジンド』に参加。彼女がつくりだす、ソウル、R&B、ジャズ、ポップを融合させた先進的で社会的・政治的意識の高いユニークな音楽は各所で高い評価を獲得しており、Barack Obama、Anderson Paak.、Naomi Campbellなどの著名人からも称賛されている。2022年4月には、待望のデビュー・アルバム『The Power In Us』がリリースされる。作品情報
アルバム名:The Power In US
リリース日:4月22日(金)* 3月11日から延期となりました
レーベル:Virgin Music UK
トラックリスト
1. Who’s Future, Our Future!
2. Playgod
3. Holiday From Reality
4. Mothers Sisters Girlfriends
5. Interlude / Reclaim Yourself
6. Demons
7. Interlude / All For You
8. Fall Together
9. Fall Together Outro (feat. Nubya Garcia)
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